第6章 秋は夕暮れ①
「えっと、、、」
沙織は言葉に詰まって、固まっている。
その表情はとても困惑しているように見えた。
参ったな、、、冗談のつもりだったんだけど、、、
新開はフォローしようと口を開いた。しかし次の瞬間、沙織の頬を涙が伝った。
ドクン、、、
涙が溢れる沙織の目。その目を見た瞬間、新開の心臓がまた大きな音を立てた。そして気がついたら目の前の沙織を抱きしめていた。
背の高さは変わらない筈なのにその身体は思っていたよりもずっと小さく儚げだった。
君を笑わせるのも
君にそんな顔をさせるのも
全部アイツなんだな、、、。
沙織の香りが再び新開の脳を痺れさせる。そしてその香りがスーッと身体中に沁み渡るのを、新開は目を閉じて味わった。
まったくおかしいよな。
立ち止まっているハズなのに心臓が高鳴って、
胸が苦しいなんて。
それでも
このまま苦しくてもいいから
ずっとこうしていたいと
思うなんて、、、。
新開は沙織の髪に顔を埋めた。柔らかな髪が新開の頬をくすぐる。
なぁ、沙織ちゃん。
俺なら君にそんな涙は流させない。
今からだっていい。
アイツじゃなくて、
俺を、、、
「えっと、新開?どうした、、、」
しばらく呆然としていた沙織は、気がついたかのように新開の腕の中でもがいた。
新開はそれを知っていたが沙織を離さなかった。むしろ、その腕にギュッと力を込めて、沙織の身体を強く強く抱きしめた。
見てほしいのに、、、。