第6章 秋は夕暮れ①
だから新開は見守ろうと思っていた。
あの日、この2人に何があったかは知らない。
しかし沙織の瞳に自分が映ることはもうない。
それもあの日荒北を追いかける沙織の目を見て知っていたから。
辛いかって?
もちろん。
でも、分かっていたんだ。
何かが動くとしたら今日だって。
なのに奴さんは、いつまでも避けて避けて、、、
やっとか、、、と新開が溜息をついた時、
沙織が荒北の手を振り払い、そのまま教室を飛び出してしまった。
そして新開はその瞬間を見てしまった。
扉から出ていく沙織の瞳から涙が溢れ落ちた瞬間を。
新開の心臓が大きく脈打った。
ドクン
胸が痛くなるほど、その音は大きくて。
神様っていう奴は本当に意地悪だな。
新開は心の中で笑った。
そのまま呆然とする荒北に近づき、肩を叩いた。
「靖友?」
なぁ、おめさんは、
ドクンドクンと鳴り続ける心臓の音。
「沙織ちゃんと一体何があったんだ、、、?」
いつまでそうやって固まっているつもりなんだ?
その声は微かに怒気をはらんで、固まる荒北を諌めた。
それなのに荒北は呆然と扉を見つめるだけで、
プツン。
新開の頭の中で何かが切れた音がした。
「靖友、、、。ッ!!」
なぁ、頼むからもうちょっと
うまく隠してくれよ。
全部全部、、、全部
見逃させてくれよ。
なぁ、お願いだよ、神様。
全く何してるんだよ、靖友。
諦めようとしてたんだ。
彼女がおめさんを選ぶならって。
なのに、彼女のあんな顔を見ちまったら、、、
おめさんが彼女を追いかけないなら、、、
俺は
追いかけずにはいられないだろ、、、!
新開は沙織の背中を追って走り出した。