第6章 秋は夕暮れ①
昼休み。
新開はいつものメンバーと昼飯を食べようとしていた。
ガタン
友人の席へ移動した直後、後ろの方で音が鳴った。
振り返ると荒北と沙織が睨みあっていた。
「え?ケンカ?」
「お、おい、新開。止めた方がいいんじゃ、、、」
ざわつく教室。
新開は溜息をついた。
インターハイの最終日。
帰ってきてから荒北の様子がおかしかった。
部屋に閉じこもりきりで後輩たちが心配して荒北の部屋の前に集まる程だ。
「あ、あの、新開さん。荒北さん、大丈夫でしょうか?」
「まさか、インターハイ準優勝がショックで、、、もしかして!死、、、!!!」
「いや、それは大丈夫だろ笑」
後輩たちの余りの焦りっぷりに新開は苦笑した。
新開が落ち着いていたのにはワケがある。
もちろん、靖友はインターハイで優勝できなかったことにショックを受けたと思う。
しかし、新開は聞いていた。
バスの中で荒北と後輩たちが話しているのを。
そして知った。
その会話に出てきた、荒北を介抱していたという金髪の女が沙織であることを。
後輩達は名前を聞いていないので確信はなかったが、恐らく荒北の知り合いには沙織の他に金髪美女がいるとは思えない。
こんなことを言うと荒北に
「ンだと!新開!どういう意味だァ?テメェ、コラ」
と睨まれる図が容易に想像できたが新開は無視した。
そして今朝、明らかに不審な荒北の挙動を見て、それは確信に変わった。誰かから逃げるようにコソコソと寮の柱の影に隠れている背中。
全く、おめさんは、、、
その背中を見て溜息をついた。
そしてその背中に敢えてそーっと近づき肩を叩いた。
「よっ!靖友っ、久しぶり!」
「うわぁっ!」
これぞ驚く人の見本のような姿で飛び跳ねる荒北。
その姿に思わず笑みが零れた。
「なんだよ、その反応。もしかして誰かと見間違えた?」
面白かったので少しつついてみる。
「ウッセ!そンなんじゃねぇヨ!」
荒北はすぐに噛み付いたが、その反応はいつもより1テンポ遅い。