第6章 秋は夕暮れ①
その日、俺はずっと気分が良くて、
部活前に尽八と一緒になって
彼女のことで靖友をイジったり。
まぁ、彼女と2人で話すことができた靖友への
恨みも少しだけ込めてはいたけど、
そんな会話も楽しくて。
後日、図書室で良いところを見せることができたりして
少しずつ縮まっていく距離に
浮かれて。
また別の日には、たまたま知った彼女のバイト先で
彼女のウェイトレス姿まで見ることができて。
浮かれて。
名前で呼んでみたりして。
正直、心臓が爆発しそうだったけど、
「綺麗だね」なんて声をかけたら
彼女が赤くなってくれたりなんかしたから、
また浮かれて。
浮かれまくって。
あの日、部活が終わって帰ろうとした時に
部室を見つめる彼女の横顔を見るまでは
考えもしなかったんだ。
君の瞳に俺は映っていないんだ
なんて。
いや、本当は気づいていたのかな。
ずっと靖友と楽しそうに話す君を見ていたから。
昼休みに岩元さんが来なくなってからは1人で昼飯を食べる君が、教室にいない時は屋上に行ってるのを知っていたから。
それにさ、靖友も嫌な顔をしてても、ちゃんと応えていたから。
なぁ、靖友。
おめさんとの付き合いも長くなってきたから分かるんだ。
その顔はちょっと楽しんでる時の顔だろ?
あぁ、きっと俺はそこに入れないんだって
薄々分かっていたのにな。