第6章 秋は夕暮れ①
フゥーっと乱れた息を整えて、できるだけ自然に尋ねた。
「ん?香田さんじゃないか。どうかした?」
って、さすがに白々しかったかな?笑
だけど彼女は特段気にした様子もなく
「あーあれ。えーと、あ、荒北はどこか知ってるか?」
と少し俯きながら聞いた。
靖友?あぁ、教科書のお願いでも行くのかな?
そう思った。
「あー靖友かぁ。たぶん屋上にいるぜ。靖友はあの場所が好きだから」
そう答えたら彼女は少しホッとしたように穏やかに笑って駆け出した。
俺は靖友と仲のいい奴として彼女に認識してもらえているということ、そして何より彼女が笑ってくれたことに嬉しくなって、、、。
「靖友はベプシが好きだよ!」
彼女の背中に声をかける特別大サービス。
おかげで教科書借りれたよ!
なんてまた話しかけてもらえるんじゃないかなんて
下心丸出しの大安売りだ。
そんなことで俺の情報を売ってンじゃねーよ!
と靖友には怒られそうだけど、
彼女が笑ってくれるならそれもオーケーだ。
いくらでも怒られよう。
そんなことを考えて彼女の背中を見つめた。
次はどんな話をしようか。
どんな笑顔を見られるだろうか。
なんて、
そんなキラキラとした淡い期待を抱きながら。
次に見るのが
靖友の隣で楽しそうに笑っている
彼女の姿だなんて知りもしないで。