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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第6章 秋は夕暮れ①


ザッ
岩元さんの気配が近づくのを背中に感じて、
心臓が変な音を立てた。

どうしてここにいるんだ?
今1番見たくない顔なんだよ。
頼むから、
早く帰ってくれよ。

「岩元さんは?こんな所でどうしたの?」
笑顔で振り向き、彼女の質問は軽く流した。
「恥ずかしながら、道に迷いまして、、、」
照れたように笑う彼女。

「岩元さんらしいね」

心の奥で溜息を吐きながら、ウサ吉を撫でる。
「わぁ!ウサギ!可愛いー」
岩元さんはウサ吉を見つけると、嫌味かと思うくらいキラキラの笑顔でとなりに座った。

ま、そうなるよな。

「うん、コイツ、ウサ吉っていうんだ」
笑顔で答えて、
「俺がレースでコイツの母親を轢き殺しちゃってさ、面倒を見なきゃいけないんだ。俺って、、、最低だろ?」
爆弾を投下。

さぁ、お綺麗な君はどう返す?笑
そんなことないって否定する?
気まずい空気に背を向ける?


本当に醜くて、真っ黒な俺。
笑っちゃうだろ?


彼女は一瞬驚いた顔で固まったが、悲しそうに目を伏せた。
「そっか、、、。ウサ吉、辛かったね」
そう言ってウサ吉を撫でた。
その指は細く清らかで、ウサ吉は嬉しそうに頭を擦りつけた。
「でも、、、」
彼女は笑顔で
「新開くんで良かったね」
ウサ吉を撫でた。

本当にお綺麗なんだな。
良かった?どこが?
コイツは母親といたかったんだろ?
それに俺は、、、

つい拳に力が入った。

今、こんなに苦しんでいるんだぜ?

「なにが、、、良かったんだ?」

ジリ。
静かに彼女に近づく。
自分でも驚くほど低い声が出た。
なのに彼女はまっすぐ俺から目を逸らさない。
少し顔を見せた俺の中の鬼に驚きもしていなかった。

「だって、新開くんが拾ってくれなかったら、ウサ吉は1人ぼっちだったでしょ?」

それどころか、笑っていた。

「1人だったらできないことでも、誰かが隣にいてくれたらきっと頑張れると思うんだ」

握った拳は少しずつほどけて、

「だからきっとウサ吉は大丈夫だよ」

ウサ吉を撫でる彼女から目を離せなかった。

「ね、ウサ吉?」

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