第6章 秋は夕暮れ①
「沙織ちゃん、もしかして誰かを待ってた?」
「ハァ!?だ、誰も待ってないよ!」
む、むしろ会いたくないというか、、、
いや、まぁどーせクラスで会っちゃうんだけど!!
しかも隣の席だけど!!!
「そっか」
佳奈は特に気にした様子もなく前を向いて歩き出した。
良かった、、、とりあえずはバレてない。
沙織はホッと胸を撫で下ろした。
インターハイ後、バイトが忙しくて佳奈には会っていなかった。そういうこともあって佳奈には結局インターハイを見に行ったことを言えていない。
本当は、あれから何だか巧と話すことが減ったこと、そして荒北とアキちゃんのことを相談したかったのだが、何となく言えなかった。
っていうか、、、!
沙織は隣を歩く佳奈の横顔を見た。
「佳奈!メガネは!?」
佳奈はあのダサいメガネをかけていなかったのだ。
驚きのあまり大きな声が出た。
「ええと、コンタクトにしたんだ。今さらだけど、、、イメチェンてやつ?」
えへへと照れたように佳奈は笑い、これまでメガネに隠れていた大きな瞳が、その瞬間だけ細くなる。
お世辞ではなくその笑顔はとても可愛い。
「変じゃない?」
「全然!すごくイイと思う」
「よかった。ありがとう!」
佳奈の笑顔を見て沙織も微笑んだ。
本当にすごくイイ。
やっぱり佳奈は可愛い。
小さくて女の子らしくて、もしも私もこうだったら、、、
いやいや、こうだったら何だってんだ。
そうじゃなくて、、、
もしかして新開と何かあったのかな?
沙織は色々と想像をしてニヤニヤした。
「新開に早く見せなきゃなぁー」
「なっ!何で新開くん!?」
「ええ?だって、、、」
佳奈からわざと目をそらして口笛を吹いた。
あんだけ嬉しそうに新開の話をするんだもん笑
「もう沙織ちゃん!お願いだから新開くんには余計なことは言わないでね!」
「わかってるって!」
「絶対だよ!じゃあ、また放課後、一緒に帰ろうね」
「うん、それじゃまた」
にやけた顔で佳奈に手を振る。
膨れた佳奈の顔が面白い。
上機嫌で教室まで歩き、扉に手をかけた。
、、、、っと、
ちょーっと待ったァア!!!
が、沙織はすぐに手を離して固まった。