第6章 秋は夕暮れ①

まだまだ暑い9月。
夏休みが明け二学期が始まった。

「おはよー！久しぶりー」
「まだまだ暑いねー！」
「ホントに！ね、ちょっと日焼けしたんじゃない？」

久しぶりに会う同級生。
少し黒くなった顔から溢れる眩しい笑顔。
新しい季節に心躍らせる生徒達。
新学期の始まりはいつもそう。
しかしそんな中沙織は1学期同様浮かない顔をしていた。ただ１つ違うのは1学期にも決して軽いわけではなかった足取りが、今日は校門から一歩も踏み出せないことだ。


き、き、、、、
き、、、きまずい、、、。


沙織の足はガチガチに固まり、校門の陰に隠れていた。
沙織がこのように挙動不審になるのには訳がある。
あのインターハイの後、バイト中に沙織はあることに気がついた。
沙織がせっかく洗った皿を落として割ったほどの衝撃を受けた、それはアキちゃんのことだった。

荒北が倒れると思った瞬間、気がついたら体が勝手に飛び出していた。そしてギリギリのところで荒北を受け止めた。しかしその瞬間をアキちゃんは沿道から見ていたのではないか。
もしかするとアキちゃんも荒北を受け止めるべく走っていたかもしれない。
それなのに見知らぬ女が出しゃばって彼氏の身体を受け止めた上、感動のあまり抱きしめるとは何事か。
「あぁーあー！！アーー！！」
沙織はその時のアキちゃんの心情を思うと居ても立っても居られず、全てをかき消すように叫んだ。


あぁ、どうしよう。
もし私のせいでアキちゃんが荒北に怒っていたら。
違うんだよ！アレはそういうんじゃなくて、、、、と言ってやりたいけど。っつか、ンなこと私が言っても逆効果だっつーの！！！

校門にすがりつきながら、沙織は髪の毛を掻き乱した。

と、とりあえず、荒北には会わないようにしよう。
これ以上アキちゃんに誤解させるわけにはいかない、、、。


沙織はそーっと校門に隠れて中を覗き、
荒北がいないことを確認して、一歩踏み出す。

よし！荒北はいな、、、

そんな沙織の背中に小さな影が手を伸ばした。


「おはよ！沙織ちゃん！」
「いー！！！！？」
沙織は突然肩に置かれた佳奈の手に跳ね上がった。
「い？？」
沙織の大きな反応に丸い目を更に丸くして佳奈が首をかしげる。