第2章 出陣
マウスをカチカチと操作してモニター内の時間を巻き戻す。
大まかな地形が描かれた黒い画面に広がる、赤い波。
「かなり大きな魔術の痕跡が、立て続けに2回…か。この場所に敵がいる事は間違いなさそうだね」
日本海側に面した地方都市 冬木市は、美音川を挟んで近代的な建物が立ち並ぶ『新都』と古くからの町並みを残す『深山町』に分かれており、その反応の中心は街の東側『新都』のとあるオフィスビルだった。
私が拠点としているのは街の北側、港付近の廃倉庫。ここから新都のオフィス街までは歩いて40分というところだろうか。
「乗り込むか?」
「とりあえず偵察かな。これだけの大魔術をポンポン発動するってことはキャスター(魔術師)の可能性が高い。どんな罠があるかわかんないからね」
この聖杯戦争には聖杯を作り出した魔術師の末裔3人と外部からの参加者4人、計7名の魔術師と彼らに召喚された7騎のサーバント達が最後の一組になるまで争う。
このサーバントというものはただの使い魔などではなく、神話や伝説などの英雄が、聖杯の力を借りて現界したものだ。
それらは参加者が自由に召喚できる訳では無く、聖杯が用意した7つのクラス《器》に対応した英雄《中身》が召喚される。
セイバー(剣士)、アーチャー(弓兵)、ランサー(槍兵)、ライダー(騎兵)、キャスター(魔術師)、バーサーカー(狂戦士)、アサシン(暗殺者)。
私のサーバントであるカルナは『ランサー(槍兵)』という様に召喚されたサーバント達は自らの切り札や弱点を隠す為、英雄としての真名を隠しこのクラス名で呼ばれる。
「この鎧が有る限りオレには物理、魔術問わず攻撃は効かない。どんな罠であろうと正面から受けて立つ事もできるが」
彼はさらりととんでもないことを言ってのけた。
あれ、もしかしてコイツめちゃくちゃ強いんじゃないの?