第2章 出陣
「と、とにかく武人としてはそうしたいのかもしれないけど、却下だねランサー。最後の一人になるまで戦うこの聖杯戦争のルール的に言うと、目立つ事こそ最大の悪手だよ」
どんなにランサーが強かろうとも、私の魔力量は普通以下だから。消耗したところを他のサーバントに狙われたりしたら、たぶん持たない。
「人目に付く時間帯に戦いを仕掛けるような馬鹿はいないと信じて、踏み込むのは夜明け前ね。最低目標は工房の破壊。可能であればサーバントとそのマスターの排除まで」
「敵のマスターまで討つ必要があるのか?」
「マスターが生きてれば別のサーヴァントを呼び出す可能性があるからね。ランサーは英雄なんだし、生きてる人間を殺すのが後ろめたいならマスターは私がやるよ」
「……随分マスターを殺すという事に固執している様に聞こえるが、オレの思い過ごしか?」
彼はズレている様に見えて、時に鋭い。
そう、私は自らの手で成し遂げないといけない。
「あー、うん。バレた?ぶっちゃけ聖杯なんてどうでもいいんだ……私の本当の目的はただの復讐だよ。殺された家族の、ね」
「そんな事をしたところで死んだ家族が生き返る訳でもないだろう。復讐は何も生まない。ただ苦しいだけだ」
「……ランサー」
苛立ちを隠す事なく声色に乗せた。
「……私、そういう綺麗事はキライなんだ。二度と言わないで」
「了解した、マスター」
怒るでも説き伏せるでもなく、彼はただ従った。
その英雄に関連した遺物を触媒に用いれば、呼び出す英霊を指定する事もできるらしい。
私の様に触媒無しの召喚だと、呼び出した者と似ていたり、相性が良かったりするサーヴァントが召喚されるらしいけど。
高潔で誇り高き英雄カルナと低俗極まる私の共通点なんて、まるで無いように思えた。