第6章 強襲
「カルナ……宝具を使って」
インドラに不死の鎧と耳飾りを差し出したカルナが、代わりに授かったとされる神殺しの槍。
神話でも使われる事の無かったその槍なら、アイツを倒せるかもしれない。
「しかしアレは一度限りしか使えない」
「知ってる。だから……ちゃんと狙ってね」
かつかつの魔力を足に回す。強化と放出を同時に行えばサーヴァントには程遠いが私にだって人間離れしたスピードが出せる。
「マスター!!」
カルナは召喚獣の対応で手一杯だ。隙は私が作らなければ!
「Blitzschlag, von dieser Hand der Zorn Gottes!!(雷撃よ、神の怒りをこの手より)」
強化された腕により投擲されたサバイバルナイフは弾ける稲光と共にソロモンへと飛んだ。
しかし見えない壁に刺さったように、遥か手前で静止するナイフ。
「神秘は失われていくものだと、理解しているが嘆かわしいな。こんな曲芸もはや魔術とすら言えまい」
地球の物理法則に従ってカタリと落ちるその前に追撃を放つ。
「Ich werde auf diejenigen antworten, die das Urteil suchen!!(裁きを求める者に応じよ)」
頭上から落とされる雷は男を避けるように落ちて、地面を焦がした。
「いくら打っても無駄だ。私に魔術は通用しない」
「まだまだぁ!!Blitzschlag, von…っと見せかけて!!」
私は閃光弾を投げた。
「ぐッ、なんだ!?」
キーーンと甲高い音と共に目の眩むような白い光が辺りを包む。
見たかこれが私の詠唱破棄!マグネシウムと硝酸アンモニウムの力だ。
「令呪を以って命ずる……」
左手に温かい力が宿る。
「させるかぁああ!!」
閃光弾の影響で目を瞑っていたが直感でわかった。
令呪の発動を阻止する為、左手が狙われると。
残りの魔力の全てを右手に回す。
詠唱を唱える暇は無い。気休め程度の強化だけ。
それでも左手さえ守れれば、カルナに魔力を送れる。
「ランサー、宝具を発動し敵を打ち払え!」