第3章 境界線
思いもかけない強い力に、○○の身体はほとんど倒れ込むようにして、すっぽりと彼の胸の中に納まってしまった。
何が起こったのか、すぐに理解出来ない。
すると、背後から羽交い絞めのように抱きすくめられた。
「ちょ、シ、ルビア?」
身体を放そうともがくが、シルビアの腕は頑なだった。腕だけではなく、胸板も首筋も、○○に触れる身体の全てが鋼の様に固く引き締まっている。
○○の背筋を、得体のしれない恐怖が奔った。
――いつものシルビアじゃない。何かがおかしい。
「…○○」
苦しげな息が吐き出される。○○の耳元に唇を寄せると、シルビアはひどく粘ついた囁きを落とした。
「…かわいい」
「ええ!?」
頬が一気に赤熱する。次の瞬間、耳孔に熱く湿ったものが滑り込んで来た。
――舌だ。
「ちょっ…!」
予想もしなかった行動に思わず声が漏れた。と、同時に首筋からの肌が一斉に粟立つ。身をよじって逃れようとしたが、シルビアの力は緩まなかった。それどころか、シルビアの唇は絡みつくように耳から首筋、鎖骨までを丹念に嬲っていく。
「まって、シルビア…っ」
どうしたの、変だよ、と叫ぶなり不意に顎を掴まれ、無理にねじ上げられた。力任せの身勝手な動きに、○○は思わずうめき声を漏らす。
「い…っ!」
「おとなしくして」
シルビアの声は異様に甘ったるい。
もう一度叫ぼうとした途端、何か柔らかいものに唇を塞がれた。
――それがシルビアの唇と気づいた時、思考が止まった。
矢継ぎ早に、○○の口内へと分厚い舌が侵入してくる。
――熱、い
頭の中が沸騰を始めた。何が起こっているのか、緊急事態に思考はほぼ停止状態だ。身体は強張る一方で、力はどんどん抜けていく。
これ幸いとシルビアは思う存分に○○の口中をもてあそんだ。