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大体ばくだん岩のせい。

第3章 境界線


北国の日は落ちるのが極端に早い。窓の向こうは、いつの間にか濃い暗闇に覆われていた。
エッケハルトの山小屋の夜は、静かに更けようとしている。
○○は、暖炉に掛けた鉄瓶に水を足すと、窓に近づいてそっと外を伺った。闇の中にふりしきる雪の勢いは増したようだが、風はまだ弱く、吹雪くほどではない。
ロウ様たちは大丈夫だろうか。城下町にはそろそろ着いた頃合いだろうか、と考えを巡らせていると、○○の背後で床板のきしむ音がした。
「!」
振り返ると、もう一方の窓際にシルビアが立っている。
――気が付いたのか
慌てて駆け寄ると、○○はシルビアの手を取り矢継ぎ早に尋ねた。
「気分はどう?具合は?」
が、シルビアは沈黙したまま、ぼうっとうるんだ瞳の焦点はどこか遠いところをみているように揺らいでいる。すらりとした長身を幾分か持て余し気味に、
「○○…」
言葉はまるで、夢の中のように響いた。○○は眉をひそめる。
「シルビア?」
ちょっとごめんね、と○○は短く謝り、手を伸ばして素早く彼の頬に触れた。
――まだかなり熱があるみたい
目が覚めたのは喜ばしいが、やはり本復には程遠い状態だ。
「もう少し横になってた方が…」
とシルビアの手を引いた瞬間、彼と目が合った。
――え?
虹彩の奥に、小暗い何かが燃えている。ちらちらと赤い、炎の照り返しにも似た。
――なに
途端に、シルビアは○○の手首をつかんで引き寄せてきた。
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