第4章 雪降って地固まる
「うー、くそ。俺ダメだ」
カミュは鼻先を薄赤くして、そっぽを向いた。
「…なんて顔して会えばいいか分かんねえ」
マルティナも困惑した様子で、
「そ、うねえ…」
「まあでもここでずっと覗いてるわけにもいかねえよな」
寒いし、と吐き出した息は白く凍る。空は妙に澄み切って青い。クレイモランは久々の快晴である。
二人は、もう一度室内を覗き見た。
――こぼしたスープを慌てて拭く○○とシルビアの姿がある。
確かにぎこちなく、ひどく初々しいやり取りには、どうにも直視できない気恥ずかしさはあるが、
――きっと、お互いを傷つけあったわけではないのだろう
○○がシルビアを見る。シルビアが○○を見る。ようやく絡んだ視線が柔らかくほころんだ。
「とりあえず、私たちは何にも気付いてないってことにしときましょう」
どうにも、こちらの頬まで緩んでしまいそうになるのを何とか引き締めながら、マルティナはカミュの肩を軽くたたいた。
「そーしますか…」
諦めたように苦笑するカミュ。
そしてマルティナは良く通る声で、
「○○!シルビア!戻ったわよ!」
小屋のドアをわざと強めにノックした。