第2章 きみはまぼろし
――熱い
身体の芯に、何かが灯った。燃え残りの熾火のような、強い熱を孕んだ何か。
後ろから、誰かの囁く声がした。いや、誰でもない、自ら発した心の声。
――ほんとうは、何度、『ほしい』とおもっただろう――
瞬間的に、奥から強烈な欲情が突き上げてきた。
○○の顎を掴んで、無理やりに上向かせると、噛みつくように唇を奪う。
舌をねじ込むと、漏れた熱い吐息に眩暈がした。
――ほしい
幻の○○は身をよじってささやかに抗った。しかしこれは心底からの抵抗ではない。その証拠に、片手で抱くだけですっかり抑え込むことができる。
もがく姿が強烈に愛おしい。
腕の中に納まるか弱さも、この程度で逃れられると思う浅はかさも、○○の動作全てに煽られて、シルビアは先ほどまで自分が眠っていた寝台に○○を引き倒した。
『――!』
○○の口元が歪んだ。先ほどとは違う反応だ。何かをしきりと訴えかけているようにも見えたが、違和感を感じる度にシルビアの視界は奇妙な膜を挟んだように霞んでいく。
シルビアはもう一度○○の唇を塞いだ。薄衣をはぎ取り露になった肌に舌を這わせると、
――これ以上我慢できない
乱暴に自らの肌着を脱ぎ捨てた。
意識には赤い膜が掛かったように、鼻の奥にはあの獣の匂いがこびりついて離れない。
――○○、ごめんね。
――アタシはずっと。
――ずっとずっと本当は、こうすることを望んでいたのかもしれない。