• テキストサイズ

大体ばくだん岩のせい。

第2章 きみはまぼろし


――皆、どこへ行っちゃったのかしら
夢の中であっても、一人きりというのは不安なものね、としみじみ感じていると、
『――シルビア』
背後からふいに声がかかった。
すばやく振り返ると、
――○○?
そこにはなぜか一人、○○だけがぽつんと立っている。小柄で、華奢な身体には薄布を一枚纏ったきりという非常に煽情的な姿だった。
一瞬戸惑ったが、身なりに反して彼女の表情はとても穏やかだった。優しく無垢な、出会った時と何一つ変わらない微笑み。
――随分と都合のいい夢だこと
歩み寄ると、○○は一歩身を引いた。
――○○?
呼びかけると、○○は再び微笑む。なぜかエコーの掛かった笑い声が辺りに響いた。およそ○○の口からこぼれたとは思えない、妖艶でねばついた声音で。
戸惑いながらも、
――待って頂戴
手を伸ばすシルビアの脇をすり抜けるように、○○はシルビアの頬に両手を伸ばした。
ぞく、と触れた場所に甘い戦慄が走った。薄い唇が動いて何かを語りかけている。こちらを見上げる丸い目は、別人のように挑発的だった。
――こんな見方する子だったかしら
思い切って、シルビアは乱暴に○○の手首を捕らえた。強く引けば、柔らかな身体は崩れるように胸元に納まった。
ひどく、たまらなくなった。
シルビアは、反射的に○○を力の限りに抱きしめた。そうすることで、さらに身体の奥に灯った熱が増したように感じた。
名前を呼び、艶やかな髪に顔をうずめて頬摺りをすると、○○は戯れ返すように身をよじる。
女の身体。どのように装ったところで男とは決定的に異なる甘やかな質感。
○○の香りが脳の奥をさらに煮立たせる。
――○○
耳元に囁けば嬌声がこだまの様に返ってくる。現実よりも遥かに生々しく淫靡な反応だった。
あるいは、この時点で何かがおかしいと気付けたのかもしれなかった。
が。
/ 20ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp