第1章 まずいことになりました
――時間を遡ること数日前のことだ。
クレイモラン女王シャールから、勇者イレブン一行はシケスビア雪原の魔物掃討作戦に協力してほしいとの依頼を受けた。
雪原はかなり広大である。
一行は二手に分かれ、ミルレアンの森側をロウ、カミュ、マルティナ、シルビア、○○が、ゼーランダ山側をイレブン、グレイグ、ベロニカ、セーニャ達が引き受けることになった。
しかし邪神復活の影響か、魔物は想像以上に増加しており、特に以前とは別種レベルに変貌した変異体の強さには、戦い慣れてきているはずの一行もかなり手を焼く羽目になった。
シルビアを攻撃した爆弾岩も、恐らくはその変異種なのだろう。
当初は岩に擬態していたのだが、いざ彼が間合いに入ったとみるや、突然の自爆攻撃を仕掛けてきた。
「私が声をかけたせいかもしれません」
俯く○○の肩を軽く叩いたのはカミュだった。
「逆だぜ。○○があの時気付いたから、シルビアはもろに巻き込まれずに済んだんだ」
そうよ、と○○を励ますマルティナの横で、ロウは顔をしかめた。
「しかしあの自爆…というか光がどうもひっかかる」
「…魅了攻撃だったのでしょうか」
マルティナは小首をかしげた。
確かに、強烈な魅了攻撃は人の意識を害し、行動不能を引き起こすことがある。だがロウは首を横に振り、
「いや、ただの魅了であれば魔物が死んだ時点で解除されるはずじゃ」
「じゃあ呪いか?でも呪いだったら爺さんが解けるはずだよな」
「うむ…」
ロウが沈黙すると、誰も続ける言葉を持たない。カミュはやれやれと肩をすくめて、
「とにかく、ここで唸ってても仕方ねえな。このままにしとくわけにはいかないぜ」
眠り込んだままのシルビアの顔を見た。
どういうわけか顔色はいいのだが、終わりのしれない深い昏睡には、ザメハも効果を示さなかった。
「ただどうすりゃいいかって言うのが分かんねえんだけど…」
そこで、○○が何かを思いついたように顔を上げた。