第4章 雪降って地固まる
『だとしても成分は二・三日で自然に体外に排出されるからそう心配しなくてもいいわよ。』
元々媚薬に使われてたこともあるくらいだから、直ちに命に影響を及ぼす話ではない、と言いおいて、
『場合によっては心のタガが吹っ飛ぶこともあるかも…ま、でもシルビアだっけ?彼、心強そうだし大丈夫でしょ』
――と、そこでカミュとマルティナは顔を見合わせたのだった。
「私は信じてるわよ。シルビアは万が一にも○○を傷つけるようなことはしないって」
馬上のマルティナは、自分自身を納得させるように呟いた。
「…○○のこと、本当に大事にしてるもの。」
カミュは答えなかった。それが返って心配なのだということは口に出さない。
――確かに、シルビアが○○を何よりも大切に思っている点については間違いないだろう。
その一方で、『守るべきもの』という存在に仕立て上げることで、本来の気持ちに蓋をしているようにも見える。
シルビアの心は確かに強いだろう。
○○に対する思いもまた同様だ。
そうした内圧は抑え込めば抑え込むほど高まっていく。
この状態で万一『タガが吹っ飛』べば一体どうなるのか。
――先はあまり考えたくはない。
カミュも自分の馬に一鞭ふるうと、
「とにかく急ごうぜ」
エッケハルトの小屋へと急いだ。