第3章 境界線
「私が愛してるのは、『ほんとうの』シルビアだよ」
そういうと○○は、自分からシルビアの唇に噛みつくようなキスをした。
瞬間、シルビアの表情が豹変する。
――突然○○を突き飛ばし、僅かにのけぞって頭を抱えた。
「好、きよ…だいすき、○○、ずっと、ずっと好き」
「シル…ビア?」
「だめ、よ。あっちへ、行きなさい、○○、アタシは、あなたを」
救いを請うように、シルビアの長い腕が伸ばされた。しかし指先はむなしく宙を掻き、○○には届かない。
「ほしくて、たまら、ない」
食いしばった歯の間からうめき声が漏れた。
「ちがう。○○、あっちへいって、出会った時から、ずっと、アタシは」
誰よりも弱く、誰よりも無垢で、誰よりもまっすぐなアナタのことが――
必死に何かを押さえつけるように、シルビアは自らの身体を強く抱きしめた。
顔を上げ、○○を見る。
「シルビア…?」
「いや、よ」
と、シルビアは強く目をつぶると、深く長い息を吐いて、決然と言い放った。
「――アタシは、○○、最後までアナタを守るんだから―――」
だって決めたのよ
あなたと会った時に
あなたが本当に安らいで、笑って暮らせるまで
アタシは剣としてあなたを守るって――
「愛してるわ、○○」
シルビアの手が、目にもとまらぬ速さで寝台の脇に立てかけてあった片手剣をとった。
――いけない