第3章 境界線
必死の抵抗もむなしく、シルビアはあっさりと○○を片手で羽交い絞めにして、
「ね、ずっとずっと考えてたの」
無理やりに引きずる。さっきまで自身が横たわっていた寝台に力づくで○○を押し倒すと、
「アナタのこと。いつかね、こうして無理やりにしたら、どんな気持ちだろうって」
理性を失ったシルビアの目には今、何が映っているのだろう。
――恐ろしく頼りない○○の姿、あるいは食い散らかすに格好の獲物か。
「や、めて」
「いやよ」
○○の拒否すら楽しむように、シルビアは服の前合わせに片方の手をかける。厚手の服は、いとも簡単に引き裂かれ、胸元が露になる。○○は声にならない悲鳴を上げた。
まさかこんなことで知ることになろうとは。
――シルビアの手の圧倒的な大きさ、その腕力の強さ。
これまで○○を守り続けてきた全てが今や飢えた獣の顎に等しく、○○の身体に向けられている。
「んん?」
むき出しになった乳房の感触を手の甲でそっと確かめながら、○○の頬に寄せられたシルビアの顔には、嗜虐的な笑みが浮かんでいた。
――こんな時でさえ
ぞっとするほどこの人はきれいだ。○○は気づいた己に愕然とする。
整った目元に、すっと通った鼻梁。その鼻先で、○○の皮膚の稜線をなぞりつつ、
「あなたも」
再び耳元に唇を寄せ、シルビアは囁いた。
「――満更じゃなくなるわ」
湿った感触がまた○○の耳朶を襲った。今度は特に敏感な部分をなぞるように、的確かつ執拗に。
反射的に、○○の喉から聞いたこともないような甘い声が漏れた。
――なに
慌てて唇を噛んで耐えたが、
「あらあら」
――気付かれた
身体から血の気の引いていく音がした。
「いい声」
まって、やめて、と懇願する○○の口を、シルビアは再びキスでふさぐ。わざと音を立てながら口内をさんざんに嬲りつくし、そうしてある程度責めぬくと、シルビアの唇と手は何を悟ったか○○の身体から離れていった。