第1章 人の縁
送別会はすぐにやってきた
部長が声をかければ誰も断らない
断ると出世の道等が絶たれるから
まだいつ辞めるのかも分からないのに
お酒を飲んで騒ぎたいだけの大人
高校生の頃はこんな人生を歩むと思っていなかった
夢を見て純粋なままでいられると思ったのに
グラスを片手に会社の卓から離れ
辺りの卓を見ると
今朝見たシルエットにそっくりな人物がいた
その人を見つめながら誰だったか必死に思い出そうとする
だがどうしても浮かばない
するとその人が酔っているのか
大声で笑い始める
カッカッカと。
その笑い声で思い出した
この声は山伏先生だ
懐かしくなり思わず声をかけに行ってしまった
「山伏先生?」
「ん、拙者を存じているのか」
「高校の時にお世話になりました」
「んーその顔と感じ…あぁ!」
「お久しぶりです!」
「懐かしい奴に出会ったわカッカッカ」
「その笑い方当時と変わらずですね」
何一つ変わっていない山伏先生
社会人になってから初めて心から笑えた気がした
「飲み会なんですか?」
「こいつの歓迎会でな」
そう言って肩を掴まれた人は苦笑いである
山伏先生と同じ髪色をしている
整った顔立ちの人
「保健の一期一振先生だ」
「すごい可愛らしいお名前ですね」
「どうも、一期と申します」
「生徒ではないのでそんな丁寧になさらずとも」
軽く談笑を交えた
邪魔をしてはいけないと思い
私は会社の卓に戻った