第1章 窓辺の君
体の神経が動線が、力が抜け落ちた感じがして止まってしまった。と同時に、あの窓辺で心配した顔で見つめてくる名が浮かんできて急に頬が熱くなる。
(マジか)
東堂のおかげと言うところがなんだかなと思うがこれが好きって事なのかもしれない。こんな純粋な好きだの嫌いだのはいつぶりだろう。部活を少し早く終え連絡せずに図書室に向かう。名が自分をどう思っているか見てみたかった。自分だけの一方通行でないと思いたかった。図書室の戸を開け、名を見つけ、見守る。時たまふと外を見るのは自分を探してくれているだからだろう。
「名」
名前を呼べばまた一度外を見て自分を探し、こちらを向いた途端嬉しそうにするその笑顔にあぁ、観念しよう
「今日はお迎え付きなんですね」
この気持ちはそう言う事だ。
「たまにはこういうのも良いっショ」
「はいっ」
純粋に好きなのだ。まだまだ付き合いが浅くて嫌なところも見えてくるだろう。けれども、そんな事も一緒に解決していければと思える程
(好きっショ)
そう思いながら、嬉しそうに帰る支度をする名を見てふと外を見る。そして名との帰り道
「あんなふうに見えるんだな」
「あぁ、夕日が良い具合の時期です」
「ホントにな。あんなに綺麗に見えるとは思ってなかったショ」
木々が赤く染まり、夕日が沈んで行く様を眺められるのは素敵な景色だと思う。綺麗だったなと思い返していると
「コ、コースも、コースも綺麗に見えますよ」
真っ赤になって言う名を見て
「そ、そうなんショ」
と返せば
「は、はい。先輩・・・・も見えますよ」
とうっとりする名の横顔に
「そ、そうか」
とぎくしゃくする間ができる。
「かっこ」
格好いいと言おうとした途端
「も、もう良いっショ」
と即座に巻島に止められ、そこでやっと巻島を見るとすっかり真っ赤になっている巻島につられてさらに照れてしまう名。
「す、すみません。」
申し訳なさそうにする名にため息一つつき、自分も冷静になり
「そういう、なんだ、そうやって言われ慣れてねぇんだ」
「す、すみません。」
「いや、まぁ、そういう事じゃぁ・・・なくてだな。その、あー、ありがとう」
ポンポンと頭を撫でれば、こちらを向かない横顔が笑顔になる。
(可愛いすぎる!!)