第1章 窓辺の君
先程の心配もあるが、引かれない程度の頻度で誘い、おかげで名との事はすっかりメンバー達にばれてしまい
「良かったな巻島」
「あとは告るだけだ!!!」
「いやいや、展開早すぎショ」
そこではたと気づく、そう言えば自分は名を好きだったか?最初はただ気になっていただけで、仲の良い男女の先輩後輩の関係になっただけ。だから告白だのなんだのは少し違和感を感じるが、
「お待たせしました」
と名を見ると好きとか嫌いとかはどうでも良くなってしまう。素直に可愛いと思うのは小野田への気持ちと同じ"大事な後輩"と変わらないと思う。自分を見つめてくる名の頭を撫でれば
「ななななな」
と真っ赤になってしまうのも
「あ、悪気はないっショ」
「も、もうっ、先に行きますよ」
と照れてしまうのも、その颯爽と歩いていく後ろ姿も、横顔も、笑顔も、普段の佇まいも全て可愛いと思うのは、
『恋だな』
とその晩つい出てしまった東堂の電話。
『恋なのだよ巻ちゃん!それは恋だ!』
「いやいや」
『いやいや、それを恋と呼ぶのだよ。彼女が自然と目に止まり、気が付けば彼女の事を考え、彼女を想うと世界が素敵に見えてしまう!それはもう恋としか呼びようがないのだよ!!!』
「·····。いや。けど別に好きって訳では」
『好いてない女子を気にする奴なんて居ないぞ巻ちゃん』
それはごもっともだ。言われて見れば他に気になる女子は居ないっちゃ居ない。そりゃテレビや雑誌に載る女性達を綺麗だと思うが、それはもう割りきった感情で、そう考えると好みではない名を可愛いと思うのは····
『今も考えて居るのだろう』
「····そんな事」
『巻島祐介を射止める子か。一度見てみたいものだな』
いやいや待て待て、まだ好きとは決まって居ないだろう。しかし、
『好きでもない子を····』
気にする奴も居ないだろう。ならば好きって事か?
はて、名を見てドキっとした事は?
(一緒に居る時とかな)
可愛いと思った事は?
(帰りとか駆け寄ってきて可愛いっショ)
愛しいと思った事は?
(恥ずかしそうにしてる時とか)
自分が赤くなった事は?
赤くなった事はあの日、登っている時に初めて目が合った時、いつも見ていた名がこちらを見て、目が合った時。あの時は時間が止まった気がした。