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【弱ペダ・巻】追いかけつつ、追われつつ

第6章 無名


そうだ、名が一年生の頃は英語を教えてやるほどだった。それがやけに英語に力をいれていると思えば服飾に進学するときいて、服飾なら当然だろうと思っていたが、
(そのためなのか?)
ならばそれは進路ととしてはどうなのか。
そんな、好きなやつのためだけに今後の人生をかけてしまっていいのか。
そう巻島が考えこんでいると、
『いいんです!』
と、進路の話をしていた時の手紙にそうあったことを思い出す。
『この私にやりたい事ができたんだからいいんです!』
電話でもそうだった。
(そーゆことか)
自分を好いて追いかけてくれる子が居る。そういう考えは自意識過剰で認めたくなかったが、もう後は引けない。
(いや、引いてもあっちから来るか)
そう思うと頬が緩み、なんで自分をそんなにも好きでいてくれるのか考えたらきりがないが、
「お互い様ですよ」
と笑う名が思い浮かぶのは重症かもしれない。
こんなにも今すぐに会いたいと思うのは今までにあっただろうか。
(んなこといったら怒られそうだな)
とつんつんとしている名を思い浮かべては笑えてしまう。
そうして巻島はカレンダーを見つめ、外を見つめた。
一方、日本では卒業式が迎えられ、輝かしい思い出と、このメンバーでまた皆で会おうと別れを惜しみ、式も終わり後は帰るだけになった時。
「じゃーねー小野田君!」
「苗さんもまた!」
と小野田と別れを告げて正門に向かえば、生徒たちがちらちらと正門前に視線をやって過ぎ去っていく。誰かいるのか?と思いながらその場を通りすぎようとした時。
視界の端に入ってきた人影。何度も思い浮かべては愛しく思っていた色。
バッ!!
直ぐ様そちらに目線をやると
「よぉ、終わったか?」
と昔となんら変わらずに声をかけてきて
「なんだ坂道達とは一緒じゃねぇのか?」
と笑いながら辺りを見回しているその姿は間違いなく巻島本人だった。
「お、小野田くん!!」
と小野田を呼びに飛び出しそうにする名に
「待て待て。」
と捕まえられて
「久々に会いにきた恋人よりも坂道のとこか」
と笑われしまう。そう驚いている名に
「おめでとう」
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