第6章 無名
と頭を撫でる。名はその憧れていた行為に嬉しさを覚え、そこから感じる体温に巻島が実在する事を改めて実感すると
「裕介さんっ!!」
と抱きついた。
「周りに迷惑だろ」
そう言いつつも引き剥がす素振りは見せず、昔なら大慌てで照れていたのにこの二年間で大人になったのだなと名に思わせる。
「どうしたんですか?」
「今日卒業式だろ?」
「だ、だからって」
だからってわざわざ、これまでだって一度も自分を理由に来たことないのに。
「そんな顔すんな。」
そういってまた頭を撫でてくる
「今まで悪かったな」
そして
「早く来いよ」
とさらりと言われたその言葉。とたん名が巻島を見上げれば
「な」
「気づけなくて悪かったっショ」
そうして巻島と名は場所を移し、その間も色々な話をした。今までのことから、今までの付き合い方
「本当に悪かったって」
「・・・本当、よく付き合ってたなって思いますよ」
そう、ふてくされる名に
「なら別れるか?」
と笑いながら言えば、そんな事しないと分かってるだろうとの表情が返ってくる。
「ていうかもともと先に追って来たのは裕介さんじゃないですか」
「だから今度は名の番なんだろ?」
頬に触れられた手にはあの三人で揃いの手袋。
「きょ、今日はなんだか積極的なんですね」
と名が頬を赤らめていると
「気のせいだ」
そう言いつつも手袋を外し直接名に触れる巻島は名の温もりを確かめるかのように抱き締める。
「待ってるっショ」
「そーしてください」
その後は小野田に連絡を入れ、そのまま総北メンバーに知れ渡ったおかげでその日はファミレスで卒業パーティーが行われ巻島は早々にイギリスに戻った。
それから月日は経ち、名が高校を卒業してからはお互いの国を行ったり来たりする様になり、
「宜しくお願いします!」
「宜しく」
と今、巻島の目の前では、兄と名が挨拶をかわす光景が。この度めでたく短期留学中に、海外インターンということで兄のところで働く事になった名。
そして、巻島が一人暮らししている家に居候することにもなり部署は違えども
「職場に私情は持ち込まないこと」
「はい」
「スパルタでいくから」
「はい!」
「裕介と仲良くね」
「は、はい!」