第5章 近づく再会
名の合格発表はまさかの小野田の受験校と同じ日で、
「明日頑張って!」
「うん」
苗さんなら大丈夫。と押された背を頼もしく思いながら試験を受けに行き、結果発表がきて
「「せーのっ」」
と合格通知を二人で見せ合った。
「効果あったね!」
「二人共合格!小野田君はもう一校あるけど、ひとまず合、格!」
喜び、嬉しさついでに思い付いた事は
「巻島先輩に」
そう、
「裕介さんに」
「「お礼をしよう!」」
と初めて二人きりで休日出かけるはこびとなった。
秋葉原に出かけ、テンションの高い小野田があれが良いこれが良いと話しては名にことごとく却下されていく。
「アニメ系は分からないってー」
「ですがクモタローは蜘蛛をキャラクターにしていまして、巻島さんと言えば蜘蛛が異名に入るぐらいですしっ」
「また丁寧語になってるしー」
初めての小野田との秋葉原はと本人のオタクっぷりがよく分かり、テンションがあがると敬語になる一面を知る。
「あ、これは?!」
と、いっそ三人で揃いのものをと思い目についたのは
「やっぱり巻島さんは緑ですかね?」
「だね。で黄色は小野田君で、赤は私」
「え?僕達も買うの?!」
「三人でお揃い嫌?」
名が選んだのはカラーバリエーションのある手袋、デザインも大人っぽく、イギリスの寒さなら手袋の一つや二つあっても良いだろう。緑と言っても深緑で黄色も赤も落ち着いたトーンのもの。
「私達はメッシュの色ね」
と名が、もう変わってるかな?と言いつつ
「あ、でもバイクの時はつけないか?」
と気にする様子が、小野田には可愛く思え、
「確かにバイクの時は専用のだけど、普段には良いと思うよ」
だからこれにしよう。と小野田は笑った。喜んで手袋を手にしてお会計に向かう名を見つつ、内心二人の輪に自分も入れた事を喜んだ。名が小野田と巻島のクライマー同士という関係に入れない事を気にしているのと同じで、小野田も小野田で、名と巻島の恋人関係に入れないもどかしさを感じていた。揃いのものと言うのはなんだか仲間に入れてもらえた様で、海を渡った先で同じデザインをつけている巻島と同じ土地で同じデザインをつけている名を思うと嬉しく感じた。