• テキストサイズ

【弱ペダ・巻】追いかけつつ、追われつつ

第5章 近づく再会


「結局、裕介さんのせいだね。ロードバイク関係なら小野田君はずっと裕介さんの隣に居られるね。私は別の道から攻めるんだー」
と将来を楽しみにする姿に、進路の劣等感を救われた気になり、目の前の彼女も、巻島とずっと居ることを考えていたのだと思うと名と同じように笑えてしまう。
「巻島先輩同盟だね」
「裕介さんに言ったら嫌がりそう」
そんなふうに返されたことに妙に納得してしまい笑い合い、次の目的を探すためすっぽり抜けてしまった気持ちと焦りが前向きになっていくのが分かった。初心に戻ってもいいと思うし、このままロードバイクの世界に入っていってもいい、趣味で続けて行ったって良いしと選択肢は様々ある。
「じゃぁ部活行ってくるね。」
「今週最後だっけ?」
「そうなんだ、ちょっと寂しいけど」
「あんだけ頼もしい後輩が居るんだから大丈夫よ」
そう見送ってくれる名に笑顔を返して小野田は部活へ向かった。
卒業レースなるものは最後のお手伝いとして名も参加し、クライマー同士と言うのはやはり入り込めない関係だなと染々しながら、巻島達の代わりのつもりで皆の最後の、高校生選手の瞬間を見届けた。
後輩に繋いでいくというのはこんなにも寂しく頼もしく、心配になりつつもわくわくする気持ちになるのだろうか。冬間近の透き通った空気が思い出とともに身に染みる様だった。

卒業レースが終わると、すっかり自転車部との関わりは寒咲だけになり、男子部員同士では付き合いがあるようだったが、小野田としか会わなくなった名。
それからは瞬く間に受験が始まり、いつの間にか卒業の準備も始まっていた。
「すっかり三年が来なくなったね」
「そうだね。苗さんも明日本番でしょ?」
「緊張しかないよねー」
「試合にでるより緊張するね」
と苦笑いする小野田にお互い苦笑した。一緒に手紙を書く時間はだんだんと減ってはいたがたまにこうやって顔を見合わせるのを二人は内心楽しみにしていて
「あのお守り効くかな」
「巻島先輩からだから英語には効くんじゃないかな」
受験が近い事を巻島伝えたところ小野田と名に、揃いの梟モチーフのキーホルダーが送られてきた。
「知恵の神様だっけ?」
「日本みたく神社なんてないもんね」
「・・・・効果あると良いな」
/ 44ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp