第1章 窓辺の君
名がこちらを完璧に見ていた。目が合った。本当に合ったと思う。まさかこちらを見ているとは思っていなくて、金城が確かに言っていたのにと、まばらになる思考に思わず足を止めてしまった。
(クハッ、俺としたことが、この位で躊躇してんなよ)
全くもって笑えてしまう。今までこんな風になる自分は居ただろうか。そしてまた窓辺に目をやると心配そうにこちらを見ている名。
(あぁ、本当にバレてんのな。あー、みっともねーとこ見せちまった)
と再びペダルを回す。後ろにいたメンバーにも心配されつつ学内の敷地に入る途中、ふとあの窓辺辺りを見れば既に見切れていて名の顔がのぞくこともなく、
(さすがにな。)
と鼻で笑い、その後の部活に励んだ。
「おい!とうとう目合ったんじゃねーの?」
「やっぱりそうか。後ろの方で見ていてそう思った」
「金城も田所っちも自分の走り集中しろショ」
すっかり二人にバレバレな状況に突っ込むしかない巻島。
「いいじゃないか。やっと知り合える良い機会だな」
既に連絡先を知っているなんて言ったらどうなるのやらと思いながら金城を見る。
「そうとなりゃ、善は急げ!明日は会いに行けよ!」
急げと言うわりに明日で良いのかと内心田所に突っ込みを入れ、二人に呆れながらも部活を終え着替えようとロッカーを開けてみれば、携帯が連絡有の合図で光っている。確認してみると、
東堂、東堂、東堂。
···。
呆れながらスクロールしていけば、その中に最近登録した名前、名の名前が出てきて思わず開く。挨拶から始まり、このメアドが巻島のものであっているかの確認、そして、
『先程は大丈夫でしたか?』
と心配してくれている一文。見られていたと落ち込みつつ、連絡が来た事に嬉しくなるが、その場で返信を書こうにもあぁでもないこうでもないと迷ってしまい送れず、帰りがけ、あの窓辺をさりげなく見ればさすがに帰宅したのだろう名の姿はなかった。帰宅してる間もずっとどうやって返信しようかを悩み、悩み、悩み、
(返信出来なかったっショ····)