第1章 窓辺の君
そして次の週、練習中いつもの様に図書室を見ればふと名も自分に気づいて読みかけの本を閉じてまでこちらを見た感じがした。
「あれ?どうかしましたか巻島さん?」
そして、自分の顔が赤くなってくのも感じ、情けない事に速度を落としてしまう程だった。
「わりぃ小野田、気にしなくて良いから先に行っててくれ」
そう言っても待つのが小野田なのもわかっているので顔を赤くしながらも前へ向かう。
(いやいやいや、自意識過剰っショ。そんな訳ないショ。たまたまだ、たまたま)
と自分に言い聞かせていたが、次の日、偶然にもお互い移動教室だったこともあったのか廊下で対面し、しかも
「「あ」」
とお互い反応してしまい
(会話、会話、会話。何話せば良い?何話す?)
と内心大焦りな巻島に対してか、そんな巻島を見たせいなのか至って落ち着いている名から
「先輩から連絡先渡されましたか?」
と本題がふられた。
「あぁ。まだ送ってなくて悪い」
「なら良かった。いらなかったシュレッダーにでもかけて捨ててくださいね」
そう言って名は巻島を後にしようとしたが、巻島としては捨てる気も連絡しない気もない訳で、ただ気まずさからの逃げのせいで、けれども名にそんな事は伝わるはずもないわけで
「ちょ、ちょっと待つっショ!」
と名を呼び止め、ノートの端に自分の連絡先を書き
「俺のだ」
とその端を破って渡し
「伝えとく」
と自分から去ってしまった。しかも、廊下を曲がった途端。
(何してる俺!!!こっちが先にもらってるっての!いやいや、つーか大胆過ぎるっショ!!)
と大焦り。そして名からの連絡はいつ来るかいつ来るかと待ち構え、授業が終わり、放課後になり、部活時間になり
「行くぞ巻島ー」
と声をかけられる寸分まで携帯を見ていたが連絡はなく、ため息をつきながら集合すれば
「珍しく携帯ガン見だったじゃねーか」
と田所に突っ込まれる。それをはぐらかしコースに降りて、何が原因で連絡が来ないのかを考えながら自分も一週間しなかったのだしお互い様ということにして、坂を目の前に集中力を高めて登っていく。どんどん上るにつれて見えてくる校舎。屋上への扉の部分、屋上の格子網、校舎の始まりが見えだした時、逃げではない、本当に辛くなるので思わず下を向き、そしてまた登り、校舎を見れば