第4章 別れ、再会、しばしの別れ
「こうやって皆でやるの楽しいね」
そう言う寒咲には何度か正式入部をと誘われたが、バイトに、今まで意識していなかったファッション界の事を調べだしたら余裕はなくなり断わった。その罪悪感から顔を合わせにくくなっていたが寒咲からこうやって誘ってくれる事に感謝し、そんな寒咲は勧誘をやめた変わりに手伝いを頼むようになり
「インハイのお手伝いを!」
との誘いを受けて今年もインハイの会場へ向かう事に。去年隣にいた巻島は今年は寒咲に変わり、車に乗るメンバーも変わり、ピエール先生も車を出すようになり、自分達の学年が上がった事を染々させる。
そして事件は1日目の終わりに起きた。
小野田が金城と会ったのだ。田所も巻島も居る事に皆が驚き、寒咲は名を心配して声をかけると
「・・・・聞いていない。」
と肩を落としていた。
(小野田君か私に連絡を入れてもよくないか?先輩達は聞いていたのだろうか?どこで見てる?クライマーだし頂上?けれども頂上には今の私は行けない。)
そうなのだ
「場所移動すんぞ」
「「「はい!」」」
と補給所での受け渡しを担っている名は自由には動けない。
次の日、携帯を開いてみるものの連絡はなく、なぜ誰にも言わず行ってしまい、誰にも伝えず帰ってくるのか、今の自分は巻島にとってなんなのか?
「・・・腹立ってきた」
と呟けば、なんてことはない。自由気ままな彼氏が自由に帰ってきただけ、待ってなくて良いと言われてるのに待っていたのは自分だけ。会ったら即効で文句を言ってやろう。巻島なんか気にせずいきいきと部活を楽しんでる所を見て、少しはあっちも寂しい想いをしてもらおう。そう考えているとなんだかすっきりした気分になり、
「大丈夫になった」
と車を降りたころにはけろっとした表情を見せる名に、寒咲は理由が理由なため少し心配していたが何も言わなかった。そして2日目も終わり、負けた総北に小野田と共に肩をおとす名。
「僕ちょっと走ってきます」
とカラ元気で外に行く小野田
(私は裕介さんの変わりにはなれないよな)
とバイクライトが小さくなっていくのを見送ったその時
ブブブブブ
と腰ポケットにいれていた携帯のバイブが鳴った。
一方で小野田は東堂と会い、そして、巻島と再開を果たすことになった。