第4章 別れ、再会、しばしの別れ
そう言いながらも、手嶋先輩に励まされ、裕介さんを吹っ切れて行く様子に、小野田君の周りにはメンバーがいてくれるのにどうして自分には・・・と羨ましくも妬ましくも思い自分の器の小ささに凹む悪循環に陥っていた。けれど時たま小野田君が言う
「苗さんは巻島さんの彼女だから」
というのが祐介さんを慕い、小野田君に彼女として認められ、小野田君が変わりに一緒にいてくれているのだと心強く感じていた。
小野田と名とで巻島に手紙を書くことはすっかり定着し、名は部活を手伝っている事、小野田に手紙を返してあげてほしいこと、自分の進路の事、そして二年生になって一気に心配になってきた二人の関係の事を綴った。そして、部活の手伝いを機にピエール先生との縁ができ、先生のところへ英語の質問をしに行けば英語で返答される良い英会話の練習になり、留学をするなら資金も必要だと思い立ってなんとか見つけたバイトで貯金も始め、その頃にはすっかり5月を過ぎていた。合間に手伝いに行った自転車部の合宿はとても過酷で、そんな様子を見せなかった巻島がさらに格好良く思わせ、そして
「返信きませんねぇ」
「そうだねぇ」
と小野田と名は巻島を懐かしむのだった。
「部活の時間大丈夫?」
「あー、あともう少しだったんだけど行かなくちゃ。」
「続きは各自でってことで」
「そうだね」
そうして二人で教室を出る。
「今日も図書室?」
「うん」
勉強頑張ってねと言う小野田に
「裕介さんの変わりに今は小野田君が見えるよ」
と伝える。今なら分かる
「裕介さんがよく見えたところ、あれクライマーが通るところでしょ。今は小野田君が一番に見えるよ。」
車体が黄色だからかなと笑うと、そうかもしれないねと、少し嬉しそうに笑う小野田。名が勉強してることを知ってか手紙を書く会はテスト勉強会になることもあり、その時だけは今泉、鳴子に寒咲も交え名はすっかり自転車部の一員になる。