第4章 別れ、再会、しばしの別れ
と名はその後からは責めてくることなく大人しくなり
「別にこんなことで学校休むなって」
と苦笑する巻島。
「こんな事だから行くんです!!!」
強く言う名の横顔は目頭に涙が滲み、
「俺もな」
寂しいよと言おうとしながら巻島は口をつむった。そして次の日、巻島は静かに旅立った。
裕介さんが旅立ってからは金城さんと田所さん、一年生、二年生の各メンバーが話をききに来て大変だった。知っていた事を告げると、皆裏切られたかのような表情をして帰って行き、それを見送りながら自分も酷い事をしていたなと身に染みていた。一番酷かったのはやっぱり小野田君で、人前では気を使いカラ元気なのも良く分かり、二人で裕介さんに手紙を書いたけど返信は一斎無かった。誰にも詳細を伝えず、住所だけ置いていき、返信もよこさない。
「なんなの裕介さんは・・・」
そうイライラする私に
「なにか理由があったんだよ」
と笑いかけてくれる小野田君は手紙を書き続け、私もそれを見習った。今思うと私だけでは、来もしない返信を待ちながら手紙を書く事は出来なかっただろう。そして、音沙汰なく一年生が終わり二年生になり、兄を手伝うと言っていたのを真に受けて追いかける様にファッションの道に進む事を決めた私は文系に進み、服飾の大学に行くか専門に行くかを悩んでいた。そんな話を今泉君にしていたら
「そこでロードバイクは入ってこないのか」
と言われたが、ロードバイクの世界は裕介さんが今まで築き上げてきた世界で、そこに入るのは恐れ多く、二人で新に歩める道への可能性はファッションの方だと賭けていた。
二年生になっても相変わらず図書室にこもり、部の練習を眺め、去年を機に仲良くなった寒咲さんに頼まれれば時たま自転車部を手伝った。今年は去年の優勝が影響して新入部員がとても多く、先輩ぶるのも優勝者ぶることも出来ず慌てる小野田君は
「巻島さんの様には上手く行かないな」
と健気に祐介さんを目指し、
「小野田君には小野田君なりの先輩のなり方があるよ」