• テキストサイズ

【弱ペダ・巻】追いかけつつ、追われつつ

第4章 別れ、再会、しばしの別れ


インハイから帰ってきてからの夏休み、途端に電話がなれば
『出かけましょう!』
と名からの誘い。会う間は手を繋ぎ、海外に渡るまでの時間を埋めたいのもあって名の誘いは断らない様にしていた。それに、駅前でいつもより少し背伸びをした名の姿は、名自身も可愛いが、会いたい気持ちが自分だけではないという事だと嬉しく思えた。
「今日はどこ行くんだ」
「へへ、どこでも良いんですー」
そんな解答にこのまま連れ去ってしまいたくなりながら名の気まぐれに付き合う。なんてことはない、ただただ街を巡り他愛ない話をし別れる。最近は軽く口付けをして別れるのがお決まりで
「あの・・・」
「・・・またな」
と少し物欲しげな表情の名を今すぐ頂いてしまいたい気持ちに耐えながら、抱く気はあっても決してそれはしないで海外に発つ気でいた。
(あんな顔反則ショ)
名と別れた後、かーっとなる自分にさらに赤くなる。あんな名を置いていってしまう自分が悔しくて仕方ない。可愛くて仕方ないのに置いてくしかできないまだまだ子供な自分、ため息がでる。
「お兄さんのブランドを手伝うんですか?」
二人で進路の話をしている時そうきけば
「そうだな」
とのその言葉一つで自分の将来を決めてしまうのもどうかと思うが、それからはあっという間だった。夏休みがあけても裕介さんは進学を誰にも言わず、私も自転車部から離れてしまい、いつも通りを装いながらとうとう裕介さんの最終日になった日。いつもの様に図書室から外を眺めると校庭で小野田君と話す裕介さんを見つける。一度話終えて別れた二人は小野田君が裕介さんを引き留め二人で走りに行った。その様子を見て寂しくも安心していた。あの様子ではきっと小野田君ですら知らないだろう。ならば走り納めになる。
「なんで言わずに行くんですか」
その日の帰り道、最後なのだからもっと、楽しい思い出になるようにすればいいのに出た言葉は
「友達なら、仲間なら、もっと、ちゃんと言うべきだったんじゃないですか?!」
と責め立てたものだった。
そんな名を巻島は
「ごめんな」
と頭を撫で、寂しそうに笑う。
「・・・明日、行きますから」
/ 44ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp