第3章 終わる夏
それから少し二人話さず静かな時間を過ごしていると金城と田所が巻島を呼びにきて
「ちょっと行ってくる」
とその場を立ち去る巻島。名は巻島を見送りながら先に居る金城達に頭を下げ、巻島は二人に合流すると去り際に手をふってくれた。それを田所に茶かされ、金城も名に小さく手をふって去っていく三人の表情はこの三年間色々な事があり、後悔しつつも、満足いく優勝を得た感じに見えた。
(終わっちゃったなぁ)
インハイが終わると言うことは夏が終わると言うことで、それは巻島が旅立ってしまうと言うこと。
(あっという間だったな)
と思い返し、やはり部を手伝ったことにたくさんの思い出ができて良かったなと思う。あの後、帰ってきた三人を見かけたが行きと同じ表情でいるのを見ると二人にはまだ話してない様で
(ま、このタイミングではないか)
と、せっかく良い気分の時に落とす事はないし、あんな表情をしつつ巻島はどんな心境なのか少し心配になりながらも積もる話は尽きないだろうと声をかけずに部屋に戻った。そして次の日、帰りのバスに乗り込む際、巻島と名は鉢合わせ、じとっとした目で巻島を見つめるものだから
「な、何っショ」
とたじろう巻島に
「何でもないです」
とつんとする名。お互い何が言いたいかは分かっている様で、ため息をつきながら
「その内な」
と名の隣に自然に座る巻島。そして案の定巻島の肩を借り眠りにつく名。それからはあの三日間が嘘の様に普段通りに夏休みが過ぎていき、あの歓声や、心配していた事や、色んな事が物足りなく思えてしまう。