第1章 窓辺の君
「あぁ、ならこの子だよ」
「「え?」」
ある日の図書室の受付中。一緒に組んでいる先輩がクラスメイトであろう男子生徒に声をかけ、自分には関係ないと思っていたらまさかの自分に話がふられた。そのクラスメイトの人と同じ様に振り向き、その際に靡く不思議な色の髪が綺麗に感じ
「え?あぁ」
と口に手をあてて慌て帰るその先輩は妙に印象的で、
「何あいつ」
と呆れる先輩に
「···同じクラスなんですか?」
ときけば名前から部活まで色々教えてくれて
(自転車部ねぇ)
と噂には聞いていたが、聞いていた位で興味はなく、ないからこそ何をしているのか気になった。
次の日。巻島がクラスに行くと
「はい!」
「あ?何だよこれ」
昨日のクラスメイトから紙切れを渡され開いてみれば名の連絡先
「ちゃんと本人には教えて良いって許可取ってあるからさ」
「いやいやいや」
「いやいや、有り難く頂きなよ」
無理やり渡されたそれを眺めながら、その週はあっという間に連絡できずに終わってしまった。
一方、名も名で巻島に連絡先を渡したと先輩から聞いているのに全く音沙汰ない様子を気にしながら、いつもの様に図書室の窓辺で読書をしていれば視界の端でちらつきを感じ外を見る。普段から見ていたと思っていた外は改めて嘘だと感じるほどにすぐ様巻島が目に入ってきた。普段からそのコースを走っているならば外を眺めた時には気づくはずだ。なのに今まで気づかなかったのは本当に興味がなく、今はすっかり興味深々なのだと思える。それを機にその時間になるとふと外を見てしまい、自転車が通るのを目で追うようになった。
「今日も見ていたな」
連絡先をもらった週の最後の部活後、三人並んで着替えていると金城が言う
「誰がっショ」
「誰って例の君がだよ」
「?!」
一方、巻島は連絡を取れない気まずさから図書室を見ないようになっていたのでその事に気づいてなく
「今週は何かとこちらを見ていた気がするな。」
ネクタイをしながら言う金城に
「そ、そうか」
そっけない反応をすると
「そうって巻島、お前気づかなかったのかよ」
と田所。
「い、いやぁ。まぁ、そういう時もあるショ」
巻島の弱々しいその反応に何かあったなと思う二人は話をそこまでにして帰宅し、巻島は家で大切に保管してあるメモを見てやっぱり無理だと再度、机の戸を閉めた。