第3章 終わる夏
「これが最後だ」
「わかってるっショ」
やり取りが落ち着くと二人はそう話して自分達のブースに戻っていき、1日目が始まった。
ゼッケンの意味を教わったのでよくわかる。レースが始まると順位がどんどん上がっていき、怪我をしながらも無事田所がスプリントを取ったかと思えば小野田が最下位になった。その時名は小野田には申し訳ないが小野田よりも巻島の方が心配だった。
「最後っショ」
と楽しみにしていた顔が浮かぶ。
小野田君は知ってるのだろうか、この試合が最後でラストで、小野田君が居る事により東堂さんとヒルクライムができるのを。知らない訳がない、私より一緒に居て、知らない訳がない。そう思っていた。けれども、何が凄いって、私ならそこでリタイアしてしまうだろうに彼はどん底から這い上がり、追い付いたのだ。どれだけの人を抜いて、登って、追い付いたんだろう。やる気?根性?何があればそこまで追い付ける?
100人抜きした小野田は巻島に追い付き、短い距離だったかも知れないが巻島は無事に東堂との試合が出来た。それを見て一安心した途端また僅差の試合が繰り広げられ1日目は
「お疲れ様でしたっ!!!」
と金城さんが見事1位を取った。その後、総北メンバーが着々とゴールを果たし少し経つと巻島が一年生三人を連れてゴールに向かっていった。その間名たちは明日の支度をと、古賀に皆のバイクを預けたり寒咲と洗濯物を回し続けた。やっと一息着けた時にはもう真っ暗で、宿泊先のラウンジで試合が行われたコースを眺めていると頭を撫でられながら巻島が現れる。
「ま、まだお風呂入ってないので!」
と焦ると時計を見ながら驚く顔をされ、その後
「今日はありがとな」
と抱きしめられた。お互い恥ずかしい事をしていると分かっていたが、巻島からのスキンシップを嬉しく思いそのまま身を預け、ほんの一瞬だったがそれだけで1日の疲れが飛んでいった気がした。
「お、お疲れな」
と、真っ赤になる巻島を見つつ
「今日は東堂さんと戦えて良かったですね」
と伝えると
「負けちまったけどな」
とすっきりした顔でさらに嬉しそうにして