第3章 終わる夏
「君が巻ちゃんの彼女だな!」
とやっと着いた会場を名に案内も含め一緒に回っていると、箱学ジャージに身を包んだ東堂と出くわした。すると
「東堂さんだ」
と初対面だと言うのに名は東堂を言い当て
「なんで分かるっショ」
「眠れる森の美男子だからな!」
ふふんと自信満々に言う東堂に対し
「いや、なんかチャラそうな感じがそうかと」
とズバっと言い切り
「なっ!全く!なんて教育をしてるんだ巻ちゃん!」
「別に俺は、ククッ、何も教えては、クッ、いないんだがな」
と馬鹿にされたと怒る東堂と必死に笑いを耐える巻島。失礼だったかと思っていた名も一緒に笑えば
「全く。巻島裕介を射止める奴だと楽しみにしていたのに、これでは」
「これではなんです?なんですか?」
「これでは、ただの口煩い奴ではないか!」
と言う東堂。
「はっ。残念でした!」
なにをそんな不機嫌そうに東堂とやり合うのかと思い返せば
『裕介さん好きのセンサーが同じっぽいから会えば直ぐに分かりそう。近づくと電波障害が起きそうです』
と言っていた事を思い出す。おまけに
『どーせ東堂さんばかり話してーって嫉妬からですよ!』
と言っていたのも思い出す。小野田にも東堂にも似られても・・・と思いながら
「初対面のくせにやり合い過ぎっショ」
「全くなんなんだ巻ちゃん!この彼女は!」
騒ぐ東堂に
「つーか東堂お前、名がこんな態度取るの知っててやってるだろ」
と巻島がそう言えば名は固まり、東堂は勝ち誇った様な笑みを浮かべ
「本当に、全く巻ちゃんへの愛が素晴らしいな!この俺に靡くこともなく、躊躇なく向かってくる。素晴らしい!」
あっけに取られている名を見て続ける東堂。
「分かっているのだよ、その態度が巻ちゃんを想うばかりから来る俺への嫉妬だと言う事位!さて、巻島裕介のコンディションはバッチリだろうな。教えた通りにしたのだろうな?」
と言う東堂にばっ!と巻島を見るとやれやれと言った表情。
「や、や、やっぱり東堂さんのそういう所は嫌いです!」
なぜだ?!といった表情の東堂と、真っ赤になる名はまたやり取りが始まり、笑いが止まらない巻島。