第3章 終わる夏
「あ、明日からっ」
先ほどからぶつぶつ言っている名と
「き、緊張しますねーっ」
とその隣でぶつぶつ言う小野田。ぶつぶつと言うか緊張でガタガタしていると言った方が良いのか、同じクライマーとしての後輩と、愛しい彼女が二人ともそんなでは困ったもんだと巻島はため息が出てしまう。そんな巻島を見て頑張らないと!と気合いを入れる二人にますますため息が出てしまう巻島。小野田は一緒に走れば渇を入れられる。だが名はどうしたもんかと考えているところに
「大丈夫よメイ」
と寒咲妹、一緒に小野田も照れまくってあぁもう見てられない
「妹に持ってかれたな」
田所に笑われ、拗ねつつも小野田を誘い、走りに行く
「すっかり名と仲良くなったんだな」
「はいっ!苗さんとはクラスは違うんですが、寒咲さんも苗さんもとっても優しい方で、同じ巻島さん推しとして仲良くさせてもらってますっ!」
へへと照れくさそうに笑う小野田に最後の台詞はともかく仲良くやっている様で安心し、案の定小野田の緊張は走って解消され、帰り道名が
「ボトルの受け渡しはバッチリですよ!」
と自信満々で言ってきたのを
「あれに練習はいらないっショ」
と笑えば、そんな事ない!と力説され心配はふっとんでしまった。
「寝坊すんなよ」
「しませんよ」
と挨拶を交わし別れた次の日、総北から箱根はなかなかあり、車中で隣り合わせた巻島と名。
トンっ
といきなり重みが増したと思うと名が眠りに入り巻島によりかかったせいだった。
「全く。緊張感ゼロすぎるっショ」
と愛しく見守っているとカシャッとシャッター音が鳴り、周りに冷やかしの一環で写真を撮られて恥ずかしくなってしまう。これから試合だと言うのになんやかんや賑やかな車内。けれども通り行く風景が変わって行くにつれて緊張感は増し、山が見えるとテンションは上がっていく。熟睡の名を撫でながら東堂との戦いを楽しみにする巻島。これが最後の戦いであり、初めて約束した戦い。東堂だけではない、メンバーと共に走るのもこれが最後だろう。そう思いながら会場までを過ごし、