第3章 終わる夏
「やっぱり駄目だったかな。ごめんね無理言って」
と苦笑する寒咲に
「ううん。嬉しかった。部活は邪魔しちゃ行けない気がしてたの、だから、良かった」
これで会える時間も、一緒に居る思い出も増えると嬉しく思っていた。
一方、
「良いねぇ、女子の声でのお見送り」
「良くない」
とご機嫌ななめの巻島。
そりゃ最近部活ばかりで会えても昼くらい、電話は東堂に邪魔されるしで一緒に帰る事も出来ず会いにくくなっていたので部活で会えるのは嬉しい、正直インハイに来たいと言った時も嬉しかったし、いいんだが
「なんスか先輩!独り占めですか?!独占欲っちゅーやつですか!」
「五月蝿いっショ鳴子」
「そうだぞ鳴子、巻島さんはあえて言わないようにしてるんだから黙っておけ」
「だからワイが代わりに言うとるんやろ!」
とギャーギャー騒ぐ後輩二人にため息をつく。
そう、そうなのだ。独り占め。名を周りに紹介するまでは良い、だが二人で居る時の自分もその間も周りに見られたくないし、自分と居る時の名を見せたくもなかった。
「俺が欲しいのは二人の時間であって・・・」
だからと言って皆と居る時間がいらない訳ではない、インハイもある、こんなことでざわつかせてる場合ではない。いつもの図書室の窓辺に居ない名、あの遠かった存在
「あ、お疲れ様でーす」
と皆を迎え入れる程近い距離になり、メンバーと和気あいあいとする姿に本人も楽しそうなら良いかと仕方なく思えて名の頭を撫でて休憩に入る巻島。それが許す合図だと言うのは名も感じた様で寒咲と嬉しそうにきゃっきゃっする様子を見ながら
「良いねえ」
と田所、
「他人事だと思って」
と返せば
「良い子の様だな」
と金城が言う
「そうじゃなきゃ彼女にしてないっショ」
仲間に彼女を歓迎された事で、名の入部を許した自分を許せた気がして安心する。そうして名の居る部活が始まり、再び一緒に帰る様にもなり、二人きりではないが一緒に居られる時間が増えた。そしてインハイの合図かのようにある期末テスト期間。
「久々だな」
「ですね」
と図書室のあの席で二人並んで試験勉強。部活はないと言えども結局個々で練習に励み、それを知ってか名も早めにきりあげ帰宅しており、そうしてテストが終わり、本番が近づいてきた。