第3章 終わる夏
「言わないんですか?」
「言わねぇ、てか言えね」
「友達なのに?」
「・・・・インハイ前だしな」
言いたくなさげな表情を見ると友達に言わないのもどうかと思いつつ、無理強いさせたくないと思って何も言えなくなる。
「インハイは箱根なんですよね。」
「あぁ、箱学のホームみたいなもんだな」
「ちょっと遠いですね」
「まぁ、俺達は寒咲さんが」
と言いかけたところで
「来る気か?」
「え?はい、もちろん」
と当たり前の顔をされる。
「いやいや来なくて良いっショ。遠いっショ」
「いやいや行きますよ。まだ裕介さんの試合見たことないですし。日帰りですが見に行きますよ」
と来る気満々な名を止める事は無理そうで、けれども見て欲しいと思う気持ちもあり、内心巻島は嬉しく思っていた。そして、幸運なことに
「苗さん?」
「はい?」
「初めまして、私寒咲って言います」
「あ、自転車部のマネージャーさん」
「あなたでしょ?巻島先輩の彼女って」
肯定すれば嬉しそうに手を合わせ
「やっぱり!あのね、インハイが箱根であるんだけど・・・」
と、話はとんとん拍子で進み、
「そ、そんな訳で短期間ですが宜しくお願いします!」
「・・・・・はぁ」
寒咲と揃いのエプロンをする名と、その隣で呆れ顔の巻島。寒咲からの誘いはサポートの手伝いだった。
「別に名じゃなくても良いっショ」
「名がいたら集中できないとかじゃないだろ」
と笑う田所に、
「呼び捨てすんなっショ」
とすかさずのツッコミ、その様子に
「先輩っっ」
とにやつく周りと焦る巻島
「むしろ良いとこ見てもらわないとだな」
ポンと金城に肩をたたかれ、
「す、す、すみません・・・・・」
と隣に居る名が巻島を見上げれば
「・・・・はぁ」
と肩を落とす。しかも
「ま、ま、ま、巻島さんの彼女さんっ!!彼女なんて巻島さんはやっぱり大人です!!凄いです!」
と興奮している小野田に
(名と小野田、似てる気するショ)
二人におされたら断れない。
「「行ってらっしゃーい」」
そして寒咲と一緒に練習を見送る名。
「・・・・・」
(うわー、めっちゃ複雑な顔ー)
ちらっとこちらを見ていった巻島の顔は複雑な表情で