第3章 終わる夏
晴れて付き合う事になり、そうは言っても特別変わった事はなくいつも通り図書室で待てばメールがくる。
そのはずだった。
ある日、なぜだか図書室も閉める時間になっても連絡がこず、いつもなら向かえにくるはずの巻島も来ず、付き合う前は確かにお互いの都合に合わせることもあったので
(部活が忙しいのかな?)
と遠回りをして帰りがけ、部の方を覗けば懸命にバイクを回している部員達の姿。その中に巻島の姿もあったが集中しているようだったので声をかけずにメールだけして帰宅し、家で身支度や夕飯を終えてから携帯を見ると着信の履歴が。かけ直しても話中で、放っておくと少しして折り返しの電話が鳴る。
「今日は悪かった、電話もな。」
「い、いつも誰と電話してるんですか?!」
付き合ってから巻島から電話をもらっても、取るタイミングが合わず、けれどもかけ直しても通じない事が多々あった。めんどくさい女とも思われたくないが聞いてみると
「なんだ、嫉妬か?」
と電話越しに嬉しそうな声。
「バッ、そんなんじゃ。ただ毎回だから気になっただけです。」
言いながらこれではそうです。と言っている様なものだと思っていると
「安心しろ東堂だ」
と巻島の笑い声。
「初めて東堂さんがしつこいって言っていた裕介さんの意味がわかりました」
そう言えばさらに笑われ
「今日は悪かったショ。インハイが近いからどうしてもな」
と返ってくる。
「インハイ・・・」
「暫くは先に帰ってろ。遅くまで待たせちまうからな。」
話を聞けば8月にインターハイがあり、東堂さんとのラストクライム?もあるそうで、とにもかくにも全身全霊をかけて試合に臨みたい感じがひしひしと伝わってきたので、一緒に帰れない事は了承した。したけれど、校内では会えず、電話だけの日々が一週間続き、休日も練習したいとのことで
「本当に良いのか?」
「仕方ないですもん」
「悪いな」
仕方ないと割りきりながら過ごした次の週。
「「あ」」
昼休み、珍しく昼食を買いに購買部に行けば偶然出会った巻島と名。
「もう昼買ったか?」
「あ、はい」
「じゃぁ、行くぞ」
手を引かれ屋上へ。ドアを開けると
「お、なんだとうとう知り・合・・いに・・・」
「もしかして巻島」
てっきり二人で居られるのかと思いきや、それはあくまで期待であって、着くと他の三年生メンバーも一緒だった。