第2章 不思議な関係
「何をそんなに真剣に読んでんだ?」
「恋愛小説です!」
「!?」
元気に答えられても困ってしまうが、何をそんなにと思って思いつくのは
「す、好きなやつでもできたのか?」
としどろもどろに言うと
「そうです!」
とはっきり言う名。
「そ、そうか」
まさかの返答に焦る巻島。
「どうしたらその人の恋愛対象になると思いますか?」
「クハッ、俺にきくかぁ?」
「先輩の答えが知りたいんですよー」
だってその通りにすれば対象になるのでしょ?
「あー、よくわかんねぇなぁ」
「そうですか・・・・」
「そんなに本気なのか、その相手に」
「・・・全然気づいてもらえないんですけど」
「へぇ、どんな奴なんショ」
もうここまで来るとお互い心中の探り合い。
「一緒にいると恥ずかしくなって、緊張して、けれど一緒に居たくなるんです」
家に着き、そううっとりと言う名を思い出す。
(ありゃマジだ)
どうする。どうする、まさかこんなに一緒に居て、いや、居たつもりになっていただけで結局は放課後だけで
(名にあんな表情させるやつなんてどんな奴っショ!くそっ)
留学するまでの残りの間もずっと一緒に居られると思っていた。だが、彼女はその自分の知らない奴とうまくいきたいと願い、よく分からないタイトルの恋愛小説を読みふける。
(つーかマジで誰だぁ?名に近づく男子。委員会か?じゃあ図書室に居る奴か?)
あぁ、もう考えだしたら止まらない。けれども進んでしまった恋はもう止めようがない、それに
(止める資格もないショ)
こちらとてただの良い先輩でしか居られないのだから。
(つってもまぁ、来ちまうんだよなー)
と笑いながら図書室に来てしまう自分が憎い。いつもなら部活後に名へ連絡して、名が玄関までくるのだが、今日は連絡を入れず来てしまった。
(中で名が男子と仲良くしてみろ、もう駄目だ、諦めるしかねぇ)
そう思いながら図書室の戸を開けようとすると
ガラッ
と戸があき、
「あれ?先輩?」
と名が荷物をもって出てきた。そこで気づく、
(そう言えばいつから俺のことを先輩とだけでしか呼ばなくなった?)