第2章 不思議な関係
「ありがとうございます」
と名が嬉しそうにするのに安心し、
「行ってくる」
と巻島は満足そうに笑みを浮かべた。
「行ってらっしゃい」
と返さればまた嬉しそうに
「メールする」
と部活に向かう巻島を見送り、玄関から出てきた頃合いに下を覗くと隣には途中で会っただろう後輩君が歩く。
(見たことない眼鏡君)
あれがきっと同じクライマーという眼鏡君なのだろう
(眼鏡君もきっと先輩が大好きなんだな)
と自分と同じ表情をしている小野田を見て思う。
私も大好きだ。先輩としても頼りがいがあって格好良くて、嬉しい事をしてくれて、一緒にいてドキドキする、ワクワクする時間をくれる。
(好きですよ先輩)
だからもっと自分を意識して、人前でも堂々と名前を呼び合える関係になりたい
(まぁ、付き合うというのはよく分からないけど)
けれど一緒にいたいと思う。話さない時間も愛しいと思う程に。あぁ、今までこんなに好きになった人は居るだろうか。いや居ない。そもそも同年代であんなイケメンな雰囲気を出す人は居ないだろう?恋は盲目?上等だ。周りが微妙な反応でも好きなものは好きなのだ。
(早く来ないかな)
本を読みにきているのか、巻島を見に来ているのか分からないこの時間。前まではこの文字の羅列が世界だった。けれども歳を重ね、本だけでしか知れなかった世界が少し歩ける様になっていって、本意外の楽しさを知れていく。
(私は先輩の大事な後輩ってだけですか?)
今まで苦手に思っていた恋愛小説と同じ様な考え方をしている自分を不思議に思いながら、二人の後ろ姿を見つめる。そうか、恋愛で困っているなら恋愛小説を読めば答えはあるかもしれない、そう思った名はすぐ様今読んでいる本を止めて、別の本を探し、そしてその様子を外から見た巻島は
(今日はやけに名の奴真剣に本読んでんな。って当たり前か図書室に居るんだから)
と自分も集中しないとと笑ってしまう。しかし、それからというもの名は一緒にいる時も本を読みだして
「ほっんと、危ねぇな」
と電柱に当たりそうな名の腕をひいたり、車道側を常にキープしたりしていた。