第5章 "ほ…惚れたのだよ…!"
亜美「緑間…くん…?」
泣き崩れてその場に座っている私を見て緑間くんはとても驚いていた。
緑間「おい…一体何があった…、一から説明するのだよ」
今日のラッキーアイテムなのだろう、可愛らしいウサギのぬいぐるみを抱きしめ、腰を下ろしてくれた。
その優しい気持ちに、また涙が止まらない。
緑間「…!と、とりあえず、場所を変えるのだよ!……立てるか?」
オロオロしながら手を差し出してくれる。
私はその手を掴んで立ち上がろうとするが、思うように力が入らない。
緑間「…ちっ…し、仕方ないのだよ。」
そう言うと、私の両手を掴み、強制的に立たせた後、脇と膝に手を入れて持ち上げた。
いわゆる、『お姫様抱っこ』というやつ。
亜美「えっ!?ちょっと!緑間くん!」
何とかして逃れようとバタバタと手足を動かす。
緑間くんも私も顔は真っ赤だった。
緑間「し、仕方ないのだよ!すぐ済む。恥ずかしいのなら目をつぶっておけ。」
そう言って早足でどこかへ歩き始める緑間くん。
私は恥ずかしいさでひたすら目をつぶっていた。
…………
緑間「…下ろすぞ…」
急に声をかけられ、ビクッと体が反応する。
そして、安定したベンチ?に下ろしてくれた。
亜美「あ、ありがとう!緑間くん…」
緑間「気にするな…俺が勝手にやった事だ」
そう言うと自販機で買って来てくれたジュースを手渡してくれた。
お礼を言ってパッケージを見てみる。
亜美「お、、おしるこ…。」
それは緑間くんの大好物のおしるこ。
缶を上下に振って飲む。
温かくて甘いおしるこは次第に今までの緊張から解き放ってくれた。
自然に口角が上がるのがわかる。
緑間「…。落ち着いたか…?」
自販機に寄り掛かりながらおしるこを飲んでいる。
亜美「うん…本当にありがとう。」
私は缶を両手で握りながら笑顔でお礼を言った。
口には出さないけど…緑間くんって優しい。
そう思うと心が温かくなってさっきまで止まらなかった涙も止まった。