第4章 ”従え"
亜美「あ、ごめんなさい!起こすつもりじゃなかったの!」
私がそう言うと赤司くんは変わらぬ表情のまま机の上のプリントに手を伸ばした。
多分、赤司くんは寝起きあまり良くないみたいです…。
逃げ出したい気持ちを抑えつつ、また手紙の回収をはじめた。
その様子を赤司くんはじっと見降ろしていた。
赤司「おい…それは?」
赤司くんは私の持っている赤司宛の大量のラブレターを指差した。
亜美「あ、これは全部赤司くんへのラブレターなの。これはあの子からで…こっちが生徒会副会長の女の子から…」
私は一枚一枚赤司くんの目の前の机に手紙を並べていった。
できるだけ丁寧に説明して。
でも、赤司くんは見ようともしない…。
相当機嫌が悪いのか…それともこんなの日常茶飯事でウンザリしているのか…。
でも、折角心を込めて書いてくれているのに…。
そして私は最後の一枚を机に置いた。
亜美「…これで全部だよ。…赤司…くん?」
赤司くんはじっと手紙を舐めるように見ていた。
その様子はまるでこの世の全てを見下しているような…そんな様子だった。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
次の瞬間、赤司くんは机にあった手紙を手で振り払うと、床に無造作に落ちた手紙を足で踏み潰した。
亜美「ちょ、ちょっと!!赤司くん!やめて!!」
私は急いで床に落ちている手紙を拾った。
手紙は何度も踏み潰されところどころ破れていた。
すでにボロボロになっているそれを見たとき何故だか…すごく悲しい気持ちになった。
亜美「赤司くん…どうして…こんな事するの…?」
床に情けなく座りながら声を絞り出す。
赤司「どうして…?…じゃあ、お前は好意がない男に大量に手紙を貰って嬉しいのか?」
亜美「そ…それは…」
赤司「僕にとってはこんなもの、ただのガラクタに過ぎない。」
そういって、一枚をペラペラと揺らす。
不気味な微笑みで…。
亜美「でも…!だからって…こんな事しなくても…」
この手紙には女の子達一人一人の想いが詰まってる。
私にだって片想いの経験はあるし、辛くて悩んだこともある。
だからこそ、気持ちが伝わってくる気がする。
私は無意識にその手紙を抱きしめていた。