第16章 しんろそうだん
「大体なんだよその特技……ま、確かに……」
後半ごにょっと何か言っていたけれど、あまり聞こえなかった。
「昔色々あって…覚えざる終えなかったと言いますか……」
「……っ」
繋心さんは近づいて手を握ってくれた。
少し震えてたのがばれて、ちょっとだけ恥ずかしい。
「大変だったな…」
「…うん、でもね、繋心さんが気持ちよくなるの見てから、ちょっとだけよかったなって…」
「うるせー」
頭をわしゃっと大きな手が撫でる。
「なんか趣味とかもねーのか?
子供好きとか、料理好きとか……」
「繋心さんに怒られるの好き」
「…それはわかってる。
し、それはある意味では趣味だがそういうことじゃねえ」
首を振って優しく諭される。
他にないか考えてみる。
「子供、は、回りにいなかったな…嫌いじゃないとは思います。
料理……って、生活の一部でそれは好き嫌いの問題なんですか?」
「まあ、苦になるやつもいるし、逆に好きで常に作ってたいやつもいるんだな」
「そういう人たちがお店やるんですねぇ」
私はなるほどー、と1つ知識を得た嬉しさを噛み締めた。
「ん?及川の野郎もお前の手料理食ってたのか?」
「そうですよー。
何作っても文句言われて、めんどくさいんですよね」
そりゃ料理好きにはならんわ、と繋心さんは誰にともなく呟いた。
「お前だって、褒められたらヨッシャって作ったろ?」
「……徹さんが褒めてきたら気持ち悪くて家出します」
「……あっそ」
どう想像してもあのねっとりした話し方で私を褒めるとは思えなかった。
もし言ってくれるとしたら、そのあと何かあるか、なかったとしても気持ち悪いという感想しかなかった。
(普通の女の子には優しいのになぁ…)
「普通のヤツとは違った過去ってことだろ」
そう、と一言返す。