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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第14章 あこがれ


階段を降りて玄関を開けると、大好きな彼が待ってくれていた。
「はよ。送ってやる」
「お願いします」
頭を下げると、さっと助手席に乗り、ベルトをはめる。
居心地良くて、一番好きな場所。
ハンドルに伸びる腕の血管がちらっと見えると、きゅんとしてしまう。
思わず頬がにやけるのを誤魔化すように、昨日見たテレビの話を始める。
「……その時の女優さんが綺麗で…」
「高校生らしくアイドルにきゃー!とか言わねえのかよ」
「私の好み、オジサンですよ?」
「ばっか、そのドラマに出てる同僚役、俺と同じ年だっつーの」
「…え!?」
「うわー傷つくわー」
「ほんとに?繋心さん嘘ついてません?」
「つかねーよ!!」
毎日この場所に座って、にやにやするのを誤魔化すためにテレビを見る。
それは、私の日課になってきている。
前までは、テレビなんてほとんど見たことなかったから、私の芸能人の知識はかなり乏しい。
学校の友達も、やっと最近バレー部の子たちが話しかけてきてくれるようになった。
情報網も、この逞しくも少し抜けている部からになっている。
はーっと呆れられて、繋心さんは煙草を吸い始めた。
それにいい思い出がない私は、つい、止めてしまってたけれど、最近はその頻度が少し減った。
繋心さんも、なんで止めるのか、本当の理由は知らないだろうけど、気を使ってか少し減らしてくれているようだった。
「んじゃ、今日は一緒に帰れっから」
「ほんと?」
「そのかわり、部活あるから遅いぜ」
「うん、大人しく見てます」
脱色した髪は少しぱさっとしている。
落ち着いた苦い煙草の匂いがどこか安心させてくれる。
唇を合わせると、煙たいけれど離れたくないきもちになる。
少し角度を変えられるとそれは深くなって、私の奥のほうがじんと音が聞こえそうなくらいに熱くなる。
「はー……ヤりてえ……」
「ここでシますか?」
「しねえよ」
半分冗談で聞くと、むっとした顔をされて離された。
少し温もりが残る腕が名残惜しい。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……6日はシてな…」
「思い出させんな、数えんな!」
繋心さんは何があったかよくわからないけれど、お外でデートした日にしかそういうコトをしなくなった。
少し寂しい反面、背中を見せないで済む安心感もあった。
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