第110章 【番外編】ロマンス
全身が火照るほどゆっくりとくまなく撫でなれ、数時間が経つんじゃないかと錯覚する。
後ろから羽交い締めにされてひたすら柔らかい感触に包まれる。
手首にはぐるぐるとさっきまで付けていたネクタイが巻かれていて、上手く動けない。
気持ちいいけれど、直接的な刺激がないからもどかしい。
熱くてじれったくて、もぞもぞと内腿を擦り合わせることしか出来ない。
自分で慰めることすら叶わない。
「はぁ…ぁ」
太腿の間に熱いものが挟まれ、私の敏感なところに擦れて気持ちよさでびくびくと反応する。
「ぁぁあ……!もう……!」
胸の先端に触れられると、物足りないお腹の奥がむずむずと疼いてしまい、じわりと真ん中から溢れていく。
それでも決定的な刺激にならず、もどかしい擽ったさが全身に残る。
「おねがいぃっ…も…さわってぇえ……」
私の言葉はあっさりと無視されて、無理やり後ろを振り向かせて口付けられる。
柔らかく唇を食まれ、煙たい吐息がゆっくりと重なる。
目を細めて与えられる粘膜刺激を受け入れ、深くなるのを期待して口を開いていく。
尚も唇を甘噛みされるだけで、その刺激がさらに私のお腹を疼かせるだけだった。
「んぁあっ…は…」
子供をあやすような優しいキスに、どうにも耐えられなくて、掴まれている腕を引いてなんとか深くなるように動いた。
「はやく…っ」
「ダメ」
「いじわる……」
背中に体重がかかり、ベッドにますます沈む。
「ぁぁっ…!も、いれて…おねがぃぃ……」
「もう少し」
低く掠れた声が頭に響く。
太腿に挟まれた熱いものが私の割れ目を往復する。
芽の潰される感触が気持ち良すぎて、果てることはできないのに声と潮が止まらなくて、ベッドに敷かれたタオルが湿っていく。
「いやぁあっ…!きもちぃ…、きもちぃい……!!」
「腰、勝手に動かしてる」
「とまらないのぉぉ……」
あと少しというところで身体が解放されて、何が起きたか一瞬わからなかった。
「ん…ぁ…」
はぁはぁと息を整え、風一つで身動ぎしてしまうほど敏感になった身体を持て余すことしか出来ない。
繋心さんが何を考えているかよくわからなかったけれど、少し怒っているのは伝わった。
まだ生地が固いワイシャツの前がはだけて胸元が見える。
とても、全身が疼いて、ごくりと生唾を飲んだ。
