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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第110章 【番外編】ロマンス


広めのビルの居酒屋さんに入ると個室に案内され、中にはもう数人背の高い男性がいた。
「久しぶり」
と挨拶しあってるところが見え、私だけはじめまして、と小声で挨拶してなるべく下座に座った。
がやがやと騒がしくなっていくのがさみしくなったけど、隣にいた男性が話しかけてくれた。
「覚えてる?」
「…?」
「やっぱ覚えてねえよなぁ、合宿にいたんだけど」
気怠そうに自己紹介されたのはライバル校の黒尾くんという方だった。
「結構世話焼いて貰ってた方なんだけど」
「ご……ごめんなさい」
どの合宿かすら思い出せないけれど、私はどの合宿でも繋心さんしか見ていなかったので申し訳ないけれど本当に記憶になかった。
「俺、そんなに印象薄い?」
(皆等しく覚えてません、ごめんなさい…)
心の中で謝罪した。

繋心さんと同い年くらいの方に急に声をかけられ、はっと顔を上げる。
「この子が噂の…?」
「噂になってんのかよ勘弁してくれ」
繋心さんが少し照れくさそうにやれやれと言う。
「るると申します」
「っ!え、まさか、合宿で雑用してくれてた子?」
すごく驚いた顔をして私と繋心さんを見較べられる。
「………まあ…そう」
「……」
「ほ、保護者の許可貰ってるし!!!
結婚前提だし!!!!せ、セーフセーフ!!!!」
「つまりあの頃から……?」
「くっ………」
(墓穴掘った……)
まくし立てられる繋心さんが面白くてふふっと笑ってしまった。 

ご飯とお酒が進むと更に賑やかになる。
朝早かったし、居酒屋さんのほの暗さも心地よく、美味しいご飯と美味しいお酒が入ってうとうとする…。
(ふわふわしてきた…な…隣は繋心さんだったから、肩少しお借りしようかな…)
怒られたら後で謝ろう、ゆっくり目を閉じて、よりかかった。
いつもの煙たいにおいがしない。
重たいコロンのにおいが少しする。
いつもと違う香り……。
気を遣ってるのかな……。

気がつけば夢の中だった。
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