第110章 【番外編】ロマンス
東京に行く繋心さんについていくことになった。
勿論嬉しかったけれど、スーツを着てきちんと整えているのを横で見ると少し不安になる。
本当に良かったのかなと……。
(見ることが出来て幸せではある……)
どうやら部の子たちのコネクション作りというのが本題らしい。
私は好きに旅行していて構わないとのことだった。
パンフレットを見るふりをしながらちらちらとスーツの繋心さんを眺める。
私の視線に気付いたのか、訝しげに
「なんだよ…」
と聞いてくる。
「ごめんなさい、かっこよくてつい……」
本音を言うと照れ隠しのデコピンをお見舞いされた。
それでもあまりにも格好いいのでこのまま一人にさせてしまっていいのかと悩んだ。
着いてからは別行動だった。
大きなデパートのコスメ売場を眺め、気になっていた本と服を少し買って、近くのカフェで休むことにした。
あまりの人の多さにくらくらする。
人の少ないお店には入れたけれど、駅から離れている。
自分の場所をメッセージで送る方法を後輩達に教えてもらって正解だった。
ここにいます、と一言送り、冷たいカフェラテを一口飲んだ。
数十分してから、スーツで暑そうに汗をかく繋心さんが到着する。
「結構待ったか?」
と聞かれ、大丈夫です、と笑顔で返した。
急いで来てくれたのかと思うとにやにやが止まらない。
「夜はその…昔馴染みと食うがいいか?」
と気まずそうに聞かれ、
「私も行っていいんですか?」
と私も気まずそうに返す。
コクコクと頷かれ、嬉しくなった。